Saitama Society of Oncological Pharmacotherapy

主訴からirAEを検討する|倦怠感の場合

irAEが3~4つの副作用にしぼり込めそうなパターン

手順1

【主訴から想定する疾患】(手引書 P.5-6)「倦怠感」にチェックします。想定される疾患には○印がついているので関連性を検討してください。主訴「倦怠感」の場合、「サイトカイン放出症候群、血液障害、感染、下垂体機能低下、甲状腺機能低下、副腎機能低下、1型糖尿病・糖尿病性ケトアシドーシス、肝機能低下・胆管炎、筋肉障害、神経障害」が想定される疾患です。


手順2

手順1でチェックした主訴(倦怠感)が分類されている症状(全身症状)に関する【症状別のStep3】(手引書P.11-12)で、さらに検討してください。

  •  ・「レッドフラッグサイン」に該当する症状はないか
  •  ・Step1:irAEを見逃さない
  •  ・Step2:irAEと決めつけない
  •  ・Step3:対応が後手に回らない

の順に検討していきます。

該当しないことを確認します。

「だるくて動けない」の場合は、鑑別前でも緊急対応を考慮してください。また、倦怠感以外にもつらい症状が伴っていると考えられますので、丁寧に聴取する必要があります。


チェックを入れた症状に対して、見逃してはいけない疾患に○印が付いています。

「倦怠感」「食欲不振」「体重減少」にチェックし、発現時期や時々刻々と増悪しているかを確認します。倦怠感、食欲不振、体重減少で特に見逃してはいけない鑑別疾患として、「甲状腺機能低下症、副腎機能低下症、下垂体機能障害、糖尿病、肝機能障害、膵炎」が挙げられるため、これらの可能性がないかを確認します。


該当する症状にチェックし、irAE以外の疾患(基礎疾患の再発・再燃、他の疾患)の可能性がないかを検討してください。

本症例では、基礎疾患として糖尿病とHBV既往感染があるため、それらの増悪や服用薬による有害事象の可能性を除外します。また、血液障害(貧血)による倦怠感の発現の可能性を除外します。受診時の検査データは以下の通りです。

検査データでは、ヘモグロビンが軽度低値ですが、貧血症状が発現するほど低値ではありません。また、血糖値や肝機能は正常範囲内で、HBV-DNAも未検出ですから、糖尿病の悪化やB型肝炎の再活性化は考慮しにくいでしょう。Step 1では、甲状腺機能低下症、副腎機能低下症、下垂体機能障害、糖尿病、肝機能障害、膵炎「倦怠感」「食欲不振」「体重減少」の可能性として挙げられていました。しかし、血糖やT-Bil、ALP、AST、ALT、LDHなどが正常範囲内ですから、糖尿病、肝機能障害、膵炎は考えにくいです。


疑ったirAEの対応が遅れないよう、検査漏れがないかを確認します。

本症例では、Step 1、2を経て「甲状腺機能低下症」、「副腎機能低下症」、「下垂体機能障害」が原因の可能性として絞られました。TSHやT3、T4およびACTH、コルチゾールの検査が実施されていないため、これらの検査の必要性を主治医と検討してください。また、下垂体機能障害が疑わしい場合は頭部MRIなどの実施も視野に入ってきます。

これらの検査項目と【専門医へ引き継ぐまでの間に実施を考慮する追加検査】(手引書P.9-10)から総合的に検討してください。